Research
研究内容
私たちの研究室は,あらゆる天体の起源である星間物質に着目し,ミリ波サブミリ波観測という手段を駆使して,138億年にわたる宇宙の歴史の中で恒星や銀河がどのように形成・進化してきたかを理解することを目指しています.星々を生みだす低温の星間物質は様々な分子や原子,固体微粒子(ダスト)からなり,可視光を放射しません.かわりにそれらが放つ微弱な電波を観測することで星間物質の分布や物理状態を明らかにし,そこで起きている様々な現象を調べます.
Galaxy formation and cosmology
銀河の形成と進化
サブミリ波は,若かりし宇宙のすがたを解き明かす研究に威力を発揮します.ビッグバン後ほぼ水素とヘリウムのみだった宇宙は,星の誕生と死を経て,しだいに酸素や炭素などのより重い元素を獲得したと考えられています.私たちは,サブミリ波望遠鏡を使ってこうした星間物質の進化と星形成の歴史を追跡し,138億年にわたって繰り広げられてきた天体形成と物質進化の多様性豊かな歴史を明らかにしようとしています.たとえば,ALMA望遠鏡をもちいた原始銀河の探査では,ビッグバン後およそ数億年ごろの宇宙黎明期における,華々しい星々の誕生のようすが明らかになってきました (右図).さらに,重力レンズ効果を利用した遠方銀河の高精細観測,宇宙大規模構造のなかで劇的に成長をとげる銀河と超大質量ブラックホールの観測的研究などにも積極的に取り組んでいます.
宇宙再電離と初代銀河形成
宇宙誕生後わずか5億年の宇宙で産声をあげる初代銀河を研究しています.
サブミリ波であばく隠された星形成銀河
ガスや塵などの莫大な星間物質を秘めた,およそ100億年前の爆発的星形成銀河を,サブミリ波で観測しています.
活動銀河核とブラックホール
銀河の中心に潜み, 銀河の進化に重大な影響をおよぼす超大質量ブラックホールの進化を研究しています.
サブミリ波突発現象
ガンマ線バーストや超新星,重力波対応天体など,いまだ明らかになっていない突発現象のサブミリ波観測を計画しています.
Star formation and interstellar matter
星形成と星間物質
電波による原子や分子の輝線スペクトル観測によって,星間分子雲の物理状態や運動をつぶさに調べることができます.マイクロ波やミリ波・サブミリ波帯の電波を用いると,希薄な水素原子ガスから高密度な分子雲コアにいたる星間物質の進化過程に加えて,星間物質の物理状態や誕生した星が星間物質に及ぼす影響を調べることができます.A研が過去20年以上にわたって築き上げてきた世界最高の質・規模を誇る天の川銀河面とマゼラン星雲のCO分子の観測データを用いて,分子雲どうしの衝突による巨大な星団の形成過程など,星間空間中で起こる様々な物理現象の解明に取り組んでいます.
NANTEN Super CO Survey (NASCO)
新しい分子ガスサーベイ計画 (NASCO) を推進しています.このサーベイは,全天の70%に渡ってCO分子をくまなく探査する,天文学史上初の試みです.