Atacama submillimeter telescope experiment (ASTE)

アタカマサブミリ波望遠鏡実験 (ASTE)

アタカマサブミリ波望遠鏡実験,略して ASTE (アステ) は,日本が世界に先駆けて南半球に設置した口径 10 m の大型サブミリ波望遠鏡です.

私たちは,アルマ望遠鏡などの既存の望遠鏡を使うだけでなく,あたらしい観測装置をみずからの手で開発し,あらたなディスカバリースペースの開拓に挑戦しています.

DESHIMA: Deep Spectroscopic High-redshift Mapper

DESHIMA (デシマ)

DESHIMA (Deep Spectroscopic High-redshift Mapper: 高赤方偏移深宇宙分光測量装置) は日本とオランダが共同開発している新しい広帯域分光装置で、国立天文台が南米チリで運用するASTE望遠鏡に搭載されています。MKID(マイクロ波運動インダクタンス検出器)の技術を応用した超伝導集積回路を用いることで、同時に分光できる周波数帯域を広くとることができます。この方式の分光装置は世界で初めてです。この新技術を使い、はるか昔の宇宙に存在した「星間塵に隠された星形成銀河」の赤方偏移を効率よく測定し、宇宙の星形成の歴史や銀河の進化を知ることがDESHIMAの第一のねらいです。

DESHIMA: 日本とオランダが手を取り合って漕ぎ出す宇宙への大航海

オンチップフィルターバンク型分光計 DESHIMA (デシマ) は,超伝導フィルタバンクと力学インダクタンス検出器技術を用いた,サブミリ波帯で世界最広帯域の分光観測を可能にする観測装置です.従来のサブミリ波観測に用いられてきたヘテロダイン受信機では難しかった数百 GHz というきわめて広い帯域を一度に観測できる DESHIMA は,サブミリ波銀河の赤方偏移を直接測定する、いわば銀河の「年代測定」の効率を飛躍的に向上させ,広大な宇宙空間に位置する銀河の3次元地図をえがく重要な装置と期待されています.私たちは,DESHIMAの初号機 “DESHIMA 1.0” を2017年にアステ望遠鏡に搭載し,この技術を用いた世界初の天体分光観測に成功しました.

2022年には,チップと光学系をアップグレードした “DESHIMA 2.0” を再びアステ望遠鏡に搭載し本格的な銀河探査観測を開始するとともに,DESHIMAの技術を応用した分光撮像カメラ MOSAIC を開発し,メキシコの口径50mミリ波望遠鏡 LMT への搭載をめざしています.

この DESHIMA/アステプロジェクトは,ナノサイエンスを得意とするオランダのデルフト工科大学,SRON,ライデン大学,およびサブミリ波天文学を得意とする日本の名古屋大学,東京大学,北見工業大学,国立天文台が手を組んで推進している国際プロジェクトです.江戸時代に出島(オランダでは Deshima (デシマ) として伝承されています)を通じて友好を結んだ日蘭が,時を経ていま新たな航路に踏み出そうとしています.